【エンジニア 情報収集】Mix Leap Study #37 – 世界の最先端量子コンピュータ技術と機械学習
今回は先日参加してきた量子コンピュータと機械学習の勉強会の簡単なまとめとメモです
第1部:「2018年末までの量子コンピュータ業界/技術の総括」
清水 徹氏(ヤフー株式会社)
量子コンピュータには2種類
・アニーリング方式
・ゲート方式
ゲート方式なら、現行のコンピュータと同様の演算が可能。アニーリング方式は、組み合わせ最適化問題などに特化した用途。
量子コンピュータの恩恵は並列計算にある
Googleの達成している72qubitで、2013年頃の全世界の電子的データのバイト数相当の計算を1stepの処理で行えるのは驚異的。量子重ね合わせによる並列性の威力。
しかし、実用的にはもっと多くのqubitが必要。
5年くらいで条件つきで有用なものにはなりそう
今のコンピュータのすべてにとってかわる存在ではなく、「量子コンピュータを使えば、いまのコンピュータが解くことができない問題を非常にかんたんに簡単に解けることがある。」ということ。
情報にはノイズが含まれることがあるので、そのノイズを取り除く技術が必要になります。そのため古典コンピュータでは誤り符合訂正を行なっていました。
量子ビットにも量子ビットエラーが存在し、そのエラーは量子重ね合わせ状態で発生するため、古典的な誤り訂正の手法は使えません。
エラー訂正を正しく行うためには、phisical qubitを組み合わせたlogical qubitが必要になり、桁数の多い素因数分解を行う場合には1億qubitが必要とされます。
エラー訂正ができないと、結局は近似解でしかない。
■ depth, qubit数, fidelityが量子コンピュータの性能指標
fidelity、 qubit、 depthこれら三つの性能で量子コンピュータの質が決まるといわれています
depth:gate操作を何回続けられるかに関わる指標
たとえば古典計算のNOTゲートは量子計算はXゲートに相当しますが、ゲート方式の量子コンピュータは古典コンピュータと同様に論理回路を構成することでアルゴリズムをつくることができます。
そして、量子コンピュータは量子力学の重ね合わせ状態を利用して計算を行います。
しかしながら量子ビットの重ね合わせ状態は非常に不安定な状態(熱などのノイズに弱い)のために、その状態を維持できる時間が限られています。この重ね合わせ状態が持続する時間のことをコヒーレンス時間といいます。
量子コンピュータは重ね合わせ状態を利用して計算を行うので、重ね合わせ状態が続く間だけ計算を行うことができます。
このdepthという指標は言いかえると、重ね合わせ状態がどれだけ続くか、コヒーレンス時間の長さとも考えることもできます。
qubit数:量子ビット数
古典コンピュータのビットに相当する量のこと。量子ビットが多いほど1ステップの計算で扱えるくみあわせの数が増えるので、多くの演算が行えるようになります。
fidelity:1stepのゲート操作をどれだけの精度で行えるか
先ほどの量子エラー訂正に関連しますが、量子計算にも古典計算と同様にある程度の確率でビットエラーが含まれてしまいます。どれだけの精度で正しい結果が得られるかを表す量。
質のよい量子コンピュータをつくるには、
ノイズの少ない環境に、多くの量子ビットを用意する
ことが重要であると考えられます。
■ RSA公開鍵暗号(HTTPS等に利用される暗号方式)をやぶられるのはまだまだ?
HTTPSにも利用されている暗号化アルゴリズムである、RSA公開鍵暗号は膨大な桁数の素数の素因数分解が古典的CPUの演算では実時間では解けないことで安全性が担保されています。(まともに解こうとすると、宇宙の寿命くらいの時間がかかる)量子コンピュータの場合には、それを数分で解いてしまうと言われています。今回のおはなしでは、桁数の多い素因数分解には1億qubitが必要で、2019年3月の現時点で、Googleの72qubit(physical qubit)が最高だということでした。そのうえ、現状はlogical qubitを実現できておらず、エラー訂正ができません。つまりRSA公開鍵暗号をやぶるには、logical qubitの構築と相当数のqubitを用意するというふたつのハードルがあるので、HTTPSがつかえなくなる!?のはまだまだ先だとおもわれます。
httpsだからというだけで安全?調べたら怖くなってきたSSLの話!?https://qiita.com/kuni-nakaji/items/5118b23bf2ea44fed96e
第2部:「今後の量子コンピュータの展望 ~機械学習への活用~」MDR 湊雄一郎氏
MDR株式会社 ゲートとアニーリングの両方を開発している
ゲート型の「トランズモン」を開発(あまりくわしくは話せない...)
量子コンピュータが役に立たなくても、量子古典ハイブリッドでよい結果が得られる
→ 非常に有益
量子と古典のハイブリッドだと、古典の部分がボトルネックになることも
VW(フォルクスワーゲン)は最先端
既存のビジネスにとらわれず、研究開発をさかんに行う
2019年は量子機械学習
最先端の論文はMicrosoft Reserchからも出ている。
blueqat : ブルーキャット
湊氏の発表スライドはこちらのslideshareから確認できます
今回は以上です